融通と融資、ぱっと見は似てるようで似ていないその違いとは

融資というのは、お金が使いたいのに足りない人に対して、余っているお金を融通することを言います。金融機関とは、お金の余っている人からお金を集めて足りない人に融資する、その融通のなかだちをする機関ということになります。融資を受けました、資金を融通してもらいました、などと表現が変わっても意味は全く同じです。熟語の成り立ちとしては、「資金を融通すること」がショートカットして「融資」という熟語が出来たのかもしれませんね。ここにおける融通には、資金などを「なめらかに流す」という意味合があります。

ところで、ここに融通手形というものがあります。一般に「手形を貸して倒産した」とか言うのは全てこの融通手形のことを指しています。融通手形というのは最初からそういう用語があったのではなく、もともとは商業手形という用語があり、そのイリーガル版が融通手形ということになります。商業取引があった上での本来の手形ではなく、なめらかに資金を流すという意味でもなく、ただ資金の融資の為の手形という意味での「融通手形」です。実際の取引があった訳ではないので「空手形」とも言います。

融通手形にもパターンがあって、お互いがお互いの手形を交換する「なれあい手形」というものがあります。これは、両者の間に実際の商品の取引がないにもかかわらず、手形だけが交換された形です。しかしこれで両者とも手形を割引いてもらうことで、とりあえずは両者ともに現金を手に入れることができます。そしてやがて支払い期日にお金を用意できなくなると、また融通手形を出す、また資金繰りに困る、ということを繰り返して、結局は両者共経営破綻ということになっていくことが多いのです。

また資金繰りに困った人が誰かに頼んで手形を貸してもらう場合もあります。外見上は手形を貸し借りしただけにしか見えませんが、事実上は後者が前者にお金を融資したのと同じことになります。手形を借りた人は手形を割り引いてもらって、とりあえずの現金を手にします。しかし支払い期日になればその現金を返してもらわない限りは不渡りを出すことになりますから、手形を貸した方の人が自分で補填せねばならなくなります。仕方なくまた融通手形を振り出して、割引いてもらって現金化・・・と、結局はまたもや道連れ倒産という結果になるのです。

「困った知人に頼まれて」というのがきっかけだったりするようですが、融通手形で破産する人は非常に多いそうです。手形を借りる方はかなり追いつめられた状況ですから必至で頼んできますし、貸す方は表面上は紙一枚が移動するだけの手軽さもあって、つい融通してしまうのかもしれません。実際にはその額面の融資を行ったことになる訳で、そう思えばそう簡単には「融通」するはずもないのですが、言葉と見かけ上のマジックなのかもしれませんね。

閉じる